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プリキュアSS・5・マリみてなどなど2次小説置き場です


by kiryu-mika
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ごきげんよう。皆様。
マリア様がみてる2次小説「スールの方程式1」をアップしました→
ご感想お待ちしております。
# by kiryu-mika | 2009-11-30 15:16 | 玄関
ごきげんよう。皆様。
マリア様がみてる2次小説 スールの方程式2続けてアップしました→
3・4と数日中にアップできればと思っています。
# by kiryu-mika | 2009-11-29 15:28 | 玄関
ごきげんよう。皆様。
プリキュア5短編 クラスメイト3をアップしました。ご感想お待ちしております。→
# by kiryu-mika | 2009-01-01 23:27 | 玄関
絶対零度1SS 第14話の後のおはなしです。

「これからが楽しみだわ」
「プリキュア、お手並み拝見・・」
眼下の道をプリキュアたちが、歩み去るのを見送ってから満と薫は、
森の奥へ歩き出した。
緑の郷の住人には、家というものがあり、夜は休息する。
それはずっと緑の郷を観察してきたふたりも知っている。
だが、ダークフオールの住人の満と薫には休息は必要ない。
しかし、この長い夜の時間をどう過ごすかまでは、考えていなかった。
ふたりは、無言のまま今日のプリキュアたちとの最初の遭遇の体験
を心で整理しながらかなりの時間森の中を歩いて、広い公園に出た。
深夜の公園には人影はまったく見えない。
明るい街灯の下でふたりは立ち止まった。
「どう思う薫?」
「あいつらはなぜあんなにわたしたちに関心があるの?わたしたちの
正体を疑っているから?」
薫は、ずっと疑問に思っていたことをまず口に出した。満は頭を振った。
「いや。その逆ね。プリキュアたちはまったくわたしたちを疑っていない」
「ではなぜ、あんな風にわたしたちのことをあれこれ聞いたり、世話をしたがる?」
「それは・・」
<それがプリキュアの、いやこの世界の住人の性質だと思う>
満が、口を開いた時、
「おねえちゃんたち。どうしたの?家出?俺たちと遊ばな~い?」
妙な声が公園のトイレの暗がりからして、3人の男が街灯の明かりの下に出てきた。
満と薫は振り向いて、自分たちを取り囲むように立つ人間たちを無表情で見た。男達の気配にはとうに気がついていたが、ふたりにとっては、当面プリキュア以外のこの世界の住人には関心がないので無視していたのだ。
一人は見上げるような巨体の大男、残りのふたりもかなり薫よりも背が高く、年長のようだ。
中学の制服とは違う奇妙な服装でなにがおかしいのかにやにやと笑っている。
「遊ぶ?わたしたちと?しかし、わたしたちはおまえたちの友達ではない」
出てきた男達は、明らかにかなり年長だ。この世界では、これほど年齢差がある同士で遊ぶことがあるのか?
「ふやあ。おねえちゃんたちすっごくかわいいね」
「これからオトモダチになろうぜ」
「それ夕凪中学の制服だろ?中学生がこんな時間に出歩いちゃいけないなあ」
「家出したんだろ?おにいさんたちの家に来ないか?」
男達の、にやつく奇妙な表情と目配せででどうやら自分たちを包囲したつもりらしいと満は思った。
「必要ない。いこう薫」
これ以上有益な情報は得られないと判断した満は、薫をうながして歩き出した。
「おいちょっと待てよ。まだ話は終わってないぜ」
「話すことはなにもないわ」
薫は、前を見たまま男達の横をすり抜けようとした。
「いいじゃないか。こっちこいよ」
笑いながら目配せした男達は、いつもの手慣れた要領で、背の低い方のふたりの男が不意に少女たちに襲いかかった。
人間ではないふたりの目には、じれったいほどのろのろとした動作で、正面の男の手が薫の制服のつつましやかなふくらみに、満の背後から羽交い締めにしようと男の両腕がそれぞれ
伸ばされる。
薫は、純粋な好奇心でじっとその手を見ていた。いったいこの人間たちは何をしようとしているのかふたりには理解できなかった。さっきのプリキュアたちのように自分たちにあれこれ無意味な世話をしようとしているのか。
あるいは、プリキュアの仲間で自分たちの正体を試そうとしているのか?
満は、自分の背後から男が自分を羽交い締めにしようとしているのを感じていた。しかしふたりには、男達の動作は、あまりにもスローモーで隙だらけであり到底攻撃させているとは思えなかった。
さっきの国語の授業で聞いた長い作り話の「戦争と平和」とかいうものを読み終えるほどの
暇がかかってようやく男の手は薫の胸と満の身体に到達した。
「ぐへへえ」
薫は、無感動に男の手が柔らかな自分の乳房をまさぐるのを観察した。
男の表情からすると、この人間は喜んでいるように見える。これが遊ぶということなのか?
「こんなことをして何が面白いの」
薫は、感情のない声でつぶやいた。
「ぎゃあ!!」
 少し離れた位置で、背後から満に抱きつこうとした男が、
5メートルほど上空まではね上げられそのままぶざまな悲鳴と
共に地面に叩きつけられた。
「な・・・?」
薫のまだ堅さの残る胸をつかんだまま呆然と振り返って
それを見ている男の腕を、下から人間の目では捉えられない
早さで薫の手刀がはね上げた。
ギシャッ!
と腕の骨が粉砕されるいやな音がする。
薫は、すっと男とわずかに距離を取ると、驚愕と苦痛に歪み絶叫するため
大口をあけた顔面に正面から拳を一発撃ち込んだ。
グシャリッ!!
と完全に鼻がつぶれ、粉々になった歯の破片と血をまき散らしながら、
声もなく男はさっき出てきたトイレの壁まで吹っ飛びそこに叩きつけられて崩れ落ちた。
「な・・なんだ・・おまえら・・」
悲鳴を上げるわけでもなく数分の一秒の間にそれだけのことをして、
静かに残った自分に視線を移して立っているふたりの美少女に、大男が、混乱と恐怖に裏返る声でわめき立てた。
「言え・・おまえたちはプリキュアの仲間なのか?」
満は、大男を無視して、地面に叩きつけられて痙攣している
男を見下ろして絶対零度の冷え切った無感情な声で訊いた。
男達がどうやら自分たちを攻撃しているようだということは
理解したが、それにしては隙がありすぎ、攻撃というには威力
がなさすぎる・・・これはプリキュアの威力偵察なのか?
自分たちの正体に気づいたのか?それだけが満と薫の疑問だった。
「な・・なにわけわからんことを・・」
大男は、腰に巻いたずっしりと重いチエーンを引き抜くと
それを振り回した。人間が見たなら、目にとまらぬ早さで恐怖を抱く
ところだが、振り向いたダークフォールの住人には、赤ん坊がガラガラを振っているようにしか見えない。

「おまえたちはプリキュアの差し向けた者なのか?」
身構える必要も感じず、ふたりは、対の彫刻のような優雅な姿勢で
じっと立ったまま近づく大男を見つめた。
「う・あ・・」
男を無感情に見つめる2対の美しく澄んだまなざし・・
しかしその瞳はこの世界のものではない底知れない虚無をたたえて
どこまでも暗い。男はこれまで味わったことのない真の恐怖というものを感じた。
「質問に答えろ・・おまえたちはプリキュアの部下なのか?」
「プ・・プリキュア?・な・・なんだそら・・ゴラァ・・なめんなあ!!」
男は混乱し、全力で満にむかってチエーンを振り下ろした。
 満は、微動だにしないまま避けることもせず、すっと手を上げると、
うなりを上げて打ち下ろされるチエーンをそのまま腕で受け止めた。
チエーンは満の細い腕にからまり、汚れた鎖から飛んだ土が満のま新しい制服を汚した。
「・・・・!」
満の優美な眉がわずかに寄った。このプリキュアたちと
同じということで身につけた中学の制服という奇妙な服をなぜか満は最初から気に入っていた。
満は、軽くチエーンを握り、ぐいっと男を引き寄せた。
「う・ああ・・」
100キロ近い体重の男は、ぬいぐるみのように軽々と
空を飛んで満の足下にひざまづかされる。満は、男の首をつかんで自分の顔と正対する位置で固定した。
「もう一度だけ訊く。おまえはプリキュアの仲間なのか?」
「う・あ・・ああ・・・た・・たすけて・・し・・しらねえ・・」
「では、なぜわたしたちを襲った?」
「ああ・あの・・ふ・・ふざけただけなんだ・・で・です・・す・・
すみません・・ゆるしてください・・」
細くしなやかな少女の手は、太い男の首を完全につかみきることも
出来ない。しかし、男はまるで強力な機械にはさまれたように身動きできない。
じわじわと強くなってくる少女の手の力は人間のものではない別な世界のものの力だ。
じっと男の目を見つめてそらさない澄んだしかし、なんの感情も、怒りや憎しみさえたたえていない
赤い瞳も人間のものではない。男の鈍感な感覚でも、この少女は必要なら簡単に自分の首を
ねじ切ってしまうことができるし、それをためらうこともないことを感じた。この世にある
真の恐怖というものを感じて男は失禁し、幸いなことにそこで意識も失った。

「どう思う?薫?」
ズボンを濡らして気絶した男を投げ捨て、満は薫を見た。
「どうでもいい・・こいつらはプリキュアとは関係ないようだ」
「そうね・・・」
満は、自分の制服を見下ろした。さっき飛んだ土が、
胸に点々とシミをつけている。
「制服が汚れたわ」
<それがどうしたの?>
といいたげに薫は満を見ると歩き出した。服が汚れようがいまいが
戦闘には支障はない。
しかし、つられたように薫と並んで歩き出しながら、
満はまだしきりに服を手で払って土を落とそうとしている。
「満・・・?」
薫は、不意に自分の右側に隙を感じて立ち止まった。
このふたりがいつも並んで歩くのには理由がある。
ふたりで常に360度全方位を警戒し、死角がないようにお互いにカバーしあっているのだ。
だからたとえゴーヤーンでもこのふたりを不意打ちすることは不可能だ。

しかし、いま薫の右側はがら空きだ。満の注意力は、
自分の制服の胸に飛んだ一番目立つシミに集中している。
薫が見つめていることにさえ気がつかず満は、
無意識にスカートのポケットに手を入れた。なにかが手に触れる。
さっき咲が貸してくれたハンカチだ。まだ濡れている。


数時間前
プリキュアたちは、弁当という奇妙な栄養補給方法を、
教えてくれただけではなく、本来自分の取り分であるはずのものを
分けてくれた。
満たちは、罠かもしれないという可能性を考える暇もなく、
とまどいながらそれを口に入れた。
「おいしい」
と言う言葉が生まれて初めて口をついて出た。
うまいまずいを比較しようにも初めての体験なのに奇妙なことだ。
不器用におにぎりを食べ終わって満は、当惑して自分の指についたごはんつぶを見ていた。
ねばねばして擦ってもなかなか落ちない。これをどう処理したらいいかわからない。
これまでの緑の郷の観察でもこれは見落としていた。
「あ・・手がよごれちゃったね・・洗いに行こう・・こっちだよ」
咲は、満の手を取ると、廊下の水道のところに連れて行った。
満と薫たちは、咲舞と並んで手を洗った。
「あれ?満?ハンカチは?」
「ハンカチ?」
濡れた手のまま教室に帰ろうとする満に咲が声をかけた。
一応人間世界で必要なものは用意したつもりだったが、
小物などは必要ないと思っていた。
「わたしの貸してあげるよ!ちょっと汚れてるけどね。
明日返してくれればいいよ」
咲は、恥ずかしそうに白地に小さな向日葵の刺繍のあるハンカチを差し出した。
とまどいながら、無言で受け取ったハンカチで丁寧に指先をぬぐうと、
満は礼も言わずにそれをポケットに入れたのだ。
丁寧に汚れをぬぐうときれいになった胸元を見て、
満は口元にかすかに薫にだけわかる笑みをうかべた。
「満!」
薫は、いらだたしげに軽く満に向かって殺気を放った。
さすがに満は、顔をあげ、薫はふたたび自分の右側が満の気で
完全にカバーされるのを感じた。
「なに?」
満は、咲のハンカチが汚れたことに当惑して見つめていた。
自分の服はきれいになったが、キュアブルームの、咲から借りたハンカチは汚れてしまった。
どうしようか。
ちらっと一瞬、キュアブルームの、咲の・・倒すべき宿敵の・・満面の笑顔が脳裏をよぎった。
<不要になったのだから捨てるのよ>
そう薫は思ったが、満は、ふたたびハンカチを大事そうにポケットに入れた。
「あなたどうしたの?何か変よ?」
「べつに」
満は、ポケットの中でハンカチを握りしめた。
<明日洗って返す。咲に>
そんなことを思いついた自分に満自身がとまどっていた。
敵の、プリキュアのものなど投げ捨てればいいのだ。しかし・・・
  <明日、これをきれいにしてキュアブルームに渡そう>
<そしたら咲は、またさっき見せたような太陽のような笑顔でそれを受け取るだろうか>
その想いがよぎると、一瞬完璧な曲線を描く満の唇にまたかすかな笑みが浮かんだ。
薫は、不審そうに横目で見ている。これまで一度として満は、薫に打ち明けられない秘密などと
言うものを持ったことがない。しかし、この想いは、薫に話しようにも、どう説明して良いか自分でもわからない。
プリキュアを油断させるため。友達になり弱点を探るため。しかし、そんな言い訳はゴーヤーンには通用するかもしれないが、薫には無理だ。
「月がでている」
満は、薫の視線を断ち切るように空を見上げて、この星のただ一つの衛星を見た。
まだ満月にはほど遠いかすかなかすかなか細い線のような月が出ている。
「満・・」
薫は、この世界で唯一のかけがえのない者の名を呼んだ。満が黙っていたいのならそれでいい。
満のすることはいつも正しく、理由があるのだから。
満は答えない。
薫は、つられて空を見上げた。真闇の新月の淵に鮮やかに
金色の縁取りが見える。この世界で得た知識のよれば、
この月は次第に大きくなりやがて満つるはずだ。
その時自分はその金色に輝く月を直視できるだろうか。
わずかな光だけでもこんなにもまぶしいのに・・。 (終)         
# by kiryu-mika | 2009-01-01 13:48 | SS2次小説 絶対零度1
絶対零度2

 わたしたちを創造したのはアクダイカーン様なのだから、この姿を創造したのもアクダイカーン様のはずだ。
しかし、わたしたちの創造主は、なぜこの姿をお与えになったのだろうか?
なぜわたしたちだけは、カレハーンやドロドロンのように猛々しく禍々しい姿ではないのか?なぜわたしたちはプリキュアと同じような容貌と肢体をもっているのだろうか?
ダークフォールでは、自分たちの容姿について何の感情も持つ必要がなかった。
小柄であることは、戦闘には不利だが、敏捷さでは有利だ。顔かたちは、ダークフォールでは
意味がないことだ。
けれど、わたしたちが緑の郷に来て、最初に感じたのは、周囲の人間たちの視線だ。
はじめは、人間にはわたしたちがダークフォールの住人であることを感じ取る精霊のような能力
があるのかと思ったが、すぐにそうではないことがわかった。

どうやら人間にはわたしたちの容姿は非常に魅力的なものらしい。
憎悪や、恨みや恐怖の目で見られることには慣れきっている。
でも、この人間の好意のまなざしというものは、ねっとりと身体にまとわりつくようでうざったい。
特に馴れ馴れしく近づいてきてバカみたいなことを言う男たちは。
いつかの公園で襲ってきたやつらのように、片っ端から張り倒してやったらどれだけ気持ちいいかわからないけど、満は、むやみに人間たちと事を起こしてはいけないという。
道ばたでにたにた笑いながら馴れ馴れしく近づいてくる人間の男に、思い切り冷たい言葉を投げつけると少しはすっとする。


その点、満はすごい。
満は、この混沌として騒がしく不可解な緑の郷に簡単にとけ込んでいるようだ。
今、満は、公園に置かれた派手な色に塗られた妙な形の車の前で、中の男と話している。
中の男が、満になにか茶色い逆円錐の形をしてその上に白いボールのようなものをのせた
物をふたつ渡した。
満が、笑顔で男になにか話しかけている。
すると男は、みっともなく相貌を崩すと、手にした器具で、満のもった逆円錐の上の白いボールの上に、もうひとつ同じ大きさの別な色のボールを乗せた。
あれはなんだろう?
なにかの武器なのか?
緑の郷では、物を手に入れるのに貨幣というものが必要なはずだが、満は最初に渡しただけで後の分を渡そうとしない。
しかし、男はそれをとがめるわけでもなくにたにた笑いながらわたしの方に戻ってくる満を見送っている。
「はい・これ」
満は、ベンチに座って見ていたわたしに、その奇妙な形をした
冷たい物をひとつ渡して隣に座った。
わたしは、黙って受け取った。
「なにこれ?」
「アイスクリームよ」
満は、細い舌を出してそのボールをなめている。わたしもまねをして、舌を出しておそるおそるその冷たいものをなめてみた。
冷たく頼りなく甘い・・・・。
満は、器用に舌を動かし、くるくると逆円錐を回しながらアイスクリームをなめていく。
わたしもまねをするけど、この冷たいものは、すぐに溶けてきて地面にしたたり落ちてくる。
「満・・・」
「なに?」
わたしは、器用にアイスクリームを食べている満を横目でにらんだ。
「さっき、笑ってたでしょう?」
「さっき?」
「あの車の男によ」
「ああ、あのアイス屋にね」
満は、こんどは横からアイスクリームをのせた茶色の円錐の周囲の部分をかじったので、
わたしは驚いた。まねをしてみる・・・。この部分も食べられるとは知らなかった。
「なんで、笑ったの?」
「べつに・・ただもうひとつおまけしてね。と言っただけよ」
「笑うとアイスがもらえるの?」
「ふふ・・・この世界では、笑うことに意味があるのよ・・いろんな意味がね」
「笑うことに意味?」
ダークフオールで誰かが笑うのは、誰かを嘲笑する時か、誰かが滅びた時だけだ。
「咲は・・・・・・キュアブルームはよく笑うでしょう?」
わたしは、うなずいた。あんな大口を開けて笑う軽薄な女が本当に伝説の戦士なのか疑いたくなる。
キュアイーグレットのほうが上品だし、知的な感じだ。
「緑の郷では、笑うことで・・いろんな意味を伝えることができるのよ」
そういって満は、突然わたしに笑いかけた。
わたしは、心底驚いた。冷笑ではない。苦しみや悲しみを覆い隠すものでもない満の
本当の笑顔を見るのは、初めてのような気がする。わたしは、人間の男達の気持ちが
ほんの少しわかった。満の笑顔は、なんてきれいなんだろう。
「薫・・・」
「な・・なに?」
「ほっぺたにアイスがついてるよ」
満のつめたくほっそりとした白い指先が伸びてきて、
すっとわたしの頬を撫でた。満の指先に白くクリームがついている。
さっき満のまねをしてアイスを囓った時についたのだろう。
「な・・なによ・・言ってくれればいいじゃない」
わたしは、あわてて手のひらで頬を擦った。満の指先が触れたところがなんだかカァッと熱い。
「ふふふ・・・」
満は、また笑ってわたしを見た。
「薫も笑ってみたら?」
「くだらないわ」
わたしは、吐き捨てるように言った。笑うことになんの意味があるというのだろうか?
どうせ消すことになる緑の郷の人間のまねをすることなどばからしいことだ。
満は、笑みを消すと、空を見上げた。青い空というのは、なにか落ち着かない。
「それをわたしは、キュアブルームから教わった」
満は、吹いてくる柔らかな風を頬に感じながら静かな口調で言った。
「満・・なに言い出すの?」
「敵から学ぶことは恥でも何でもないわ。わたしは、プリキュアたちからいろんなことを学んでいる」
「わたしは、緑の郷の連中から学ぶことなどなにもないわ」
わたしは、残ったアイスを側のくずかごに投げ捨てた。ただ甘ったるいだけの無意味なものだ。この世界のものはみんなそうだ。
「そう?わたしは結構学ぶことがあるわ」
満は、まっすぐ前を向いたまま、円錐の最後の部分を口に入れると、ハンカチを取り出して、手を拭いた。
わたしは、じっとそれを見ていた。いつか満の持っていたキュアブルームのハンカチだ。
「それ、返したんじゃなかったの?」
「うん。でもキュアブルームが、くれるというからもらっておいたわ」
満は、わたしの方は見ないでのんびりと答えるとまた大事そうに
ハンカチを制服のポケットに入れた。
「ずいぶんと仲がおよろしいのね」
わたしは、思わずゴーヤーンのような皮肉を投げつけた。
「べつに、プリキュアと友達になり弱点を探るのは最初からの計画じゃない」
「満は、わたしたちが緑の郷に来た目的を忘れているんじゃないかと思ったわ」
「あら、薫はわたしがそんなに軟弱だと思っているの?」
また満は、わたしに笑いかけた。けれど今度は冷たく澄んだ目だけは笑っていない。なるほど笑顔にもいろいろな種類があるようだ。
けれど、満は、いつものわたしの好きな絶対零度の冷たい表情に戻るときっぱりと言った。
「ドロドロンなんかにプリキュアを倒せるはずがないわ」
「うん」
「プリキュアを倒せるのはわたしたちだけなんだから」
「うん」
満の言葉にわたしは、いつもより大きくうなずいた。

わたしは、不意に満の気にわずかな緊張を感じた。静かに満が立ち上がる。
優雅でリラックスした姿勢だけど一分の隙もない。顎を引き、口元にまた笑みを浮かべたまま、
澄んだ冷たく鋭い目が公園の向こう側を見つめている。
視線を追って満が何を見ているのかわかって、わたしも立ち上がると、満をカバーする位置に立った。
公園の向こう側からプリキュアたちが、わたしたちとわたしたちの理想、わたしたちの夢の間に立ちふさがる
最大最強の敵が、多くの同志を葬ってきた憎むべき宿敵が、こちらにむかって駆けてくる。
わたしたちを見つけて最高にうれしいという表情で。
満面の笑顔を浮かべて。
これからなにか楽しいことをしようとわたしたちを誘うために。

わたしたちは、プリキュアが駆けてくるのを待っている。
咲と舞はもうすぐここに来る。
わたしは、わたしに向かって走ってくるキュアイーグレットの跳ね上がる長く美しい髪を見つめていた。
隣に立つ満の静かな息づかいを感じる。




感謝します。アクダイカーン様
感謝します。創造主よ。かくも美しき者たちの姿に似せてわたしたちをお造りくださったことを。
感謝します。わたしたちに、かくも美しき者たちと戦う名誉をお与えになったことを。
感謝します。わたしに、かくも美しき者と共に戦う運命をお与えになったことを。
                                                       (終)
# by kiryu-mika | 2008-12-31 14:05 | SS2次小説 絶対零度1